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洗濯日和

洗濯日和

「遠い場所から」

本 この物語は、最愛の”ち~坊”を亡くした時、友人Kちゃんが実話に基づき書いてくれた、大切な大切な”宝もの”です・・・。

「遠い場所から」

リスのちぃ坊とゆうちゃんは
大のなかよし。

ごはんを食べるのも
眠るのも一緒です。

今日もゆうちゃんは
ママにもらったビスケットを
ちぃ坊と半分こしました。

「おいしいね」
にっこり笑うゆうちゃんに
うれしそうにちぃ坊が
小さく口を動かします。

「ふたりで食べるとおいしいね」
大好きなゆうちゃんに
もらったビスケットだから
どんなお菓子よりも
とびきりおいしいのかも知れません。

ちぃ坊は大切そうに
ビスケットをほおばりました。
そう。だってふたりは
いつもいっしょだから。

嬉しい時も、悲しい時も、いつも。

~そんないつもの
あたたかい朝でした。

「ちぃ坊、おはよう」
ゆうちゃんが呼んでも
ちぃ坊はこたえません。
ほんの少し苦しそうに
小さな体を動かすだけです。

「ちぃ坊、ちぃ坊!!」
泣きながら名前を呼ぶ
ゆうちゃんを
ちぃ坊はいつもの
やさしい眼で見上げました。

そうして静かに
「おやすみなさい」と言いました。

~ちぃ坊がいなくなって
はじめての夜です。

窓の向こうには、はちみつ色をした
まんまるのお月様と
たくさんのお星様が見えました。

「どうして?どうして、いないの?」
ママは、ちぃ坊はほんの少し
うたたねをしているのよと
言いました。

けれど、ゆうちゃんには分かりません。
だったらいつになれば
ちぃ坊に会えるのでしょうか。

「ちぃ坊に、会いたいよ」
ママにもらったビスケットを、
今日はひとりぽっちで
食べてみました。

ひとりで食べるビスケットは
何だかいつもより
しょっぱいような気がしました。

「・・・ちゃん。ゆうちゃん」
いつの間に眠ってしまったのでしょうか。
小さな声に起こされて、
ゆうちゃんは涙でいっぱいの
まぶたをこすりました。

ふと窓の外を見ると、
小さな銀色のお星様が
キラキラと光っています。

「ゆうちゃん、ぼくだよ」
お星様は、小さなリスの
かたちになって言いました。

「ちぃ坊は、お星様になったの?」
「うん、そうだよ。だからもう
一緒におやつが食べれないね。
一緒に遊べなくなったし、
一緒におやすみも出来ないね」

小さな星は、さっきより少ぅし
さみしそうに輝きました。

「でもね・・・。
いつでも、会えるよ。
そばにはいてあげられないけど、
あのお空からずっと見てるよ」

たくさんの星たちを指さして、
ちぃ坊はうれしそうに
言いました。
きっとたくさんお友達が
出来たのでしょう。

「ゆうちゃん、さみしくないよ。
春になったらね、またきっと
会えるからね。だからまた
ぼくを見つけてね。
約束だよ」

ゆうちゃんは、こっくりと
頷きました。

また春が来て
たくさんの
リスの赤ちゃんを見かけても
きっとちぃ坊の事は
見つけられると
何故かゆうちゃんには
分かりました。

~だってふたりは、
いつも一緒だったから。
嬉しい時も、悲しい時も、いつも。

「いつも、見てるからね。
だから、さみしくないよ。
それまでここから見てるよ」

~遠い、場所から。



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